【ブータンの未来を空から描く】 災害と隣り合わせの日常を訪ねて – 前編
日本からブータンへ向かう途中、ネパールで氷河の崩壊に伴う大規模な洪水が発生したという報道に接しました。これから訪ねるブータンも、同じヒマラヤ地域に位置しています。災害への備えは、今回の現地活動でも重要なテーマとなりました。
JUIDAは、JICAのブータン国技術協力事業「ドローン利活用環境整備プロジェクト」に共同企業体(JV)の一員として参画しています。この事業は、戦略や規制・制度、人材、安全な運用を支える仕組みなど、ドローン利活用の基盤となる環境の整備を目的としています。また、山岳地でドローンのニーズが高いブータンにおいて、日本のドローンの海外展開の一助となることも目指しています。今回は、その活動の一環として2026年8~9月に進めた、災害対応分野の実証実験に向けた現地確認や協議をお伝えいたします。
災害の報道と現地で確認した道路や集落
首都ティンプーから車で地方へ向かうと、道路は山肌に沿って幾重にも曲がり、深い谷の向こうにようやく集落が見えてきます。崩落等で道路が通れなくなった場合に、その先の状況をどう確認し、必要な物をどう届けるか。災害対応を考えるうえで、地域の道路や集落の位置は重要な条件です。
雨季の山の天気は変わりやすく、滞在中には強い雨に見舞われることもありました。災害は、こうした道路や川、集落のある日常の風景に大きく影響を及ぼします。現地では、地形や周辺の状況を確認しながら、ドローンを使う場面を検討しました。

川沿いの暮らしから考える備え
今回の活動では、プナカ、プンツォリン、ゲレフの3地域で、実証実験に向けた下見や協議を進めました。山あいの地域とインド国境に近い南部では、地形も街の様子も全く異なります。地域ごとの条件を確かめることが、実際に役立つドローンの使い方を考える第一歩となります。
プナカでは、川沿いに広がる暮らしと、歴史あるプナカ・ゾンの景観が印象に残りました。その一方で、この地域は過去に氷河湖決壊洪水(GLOF)による被害を経験しています。JICAの公開資料でも、1994年のルゲ氷河湖の決壊によってプナカに大きな被害が生じたことが紹介されています。
穏やかに見える川の流れと、上流で起きる災害への備えは、同じ場所に存在しています。こうした背景を知ると、災害時に周囲の状況を確認し、情報を伝え、必要な支援につなぐという課題が、より具体的に見えてきます。
プンツォリンやゲレフでも、川や道路、集落の位置や標高を確認しながら関係者と話を重ねました。災害時の状況確認や物資の配送といった使い方について、実証実験に向けた実施場所や運用方法を検討しました。

備えの先に守りたい日常がある
現地で目にしたのは、災害への備えを必要とする風景だけではありません。休日には若者が街に集まり、人々がスマートフォンを手に行き交います。食事の時間には料理を分け合い、訪問先では挨拶を交わす。活動の合間には、そんな普段の暮らしに触れる機会もありました。
防災について考えることは、この日常が途切れたときの対応を考えることでもあります。いつもの道が通れなくなったら、川の向こうの状況が分からなくなったら。そのときに使える手段を、平時から増やしておくことに意味があります。
ドローンが担える役割も、こうした具体的な場面の中で確かめていく必要があります。地域を知る方々の経験と、日本側の知見を持ち寄りながら、災害時に役立つ運用を考える。今回の訪問では、そのための対話と現地確認を重ねました。
後編では、ドローン利活用環境の整備を目指す本事業の中で実証実験が担う役割と、帰国途中のバンコクで大雨・洪水の影響に直面した経験をお伝えいたします。災害への備えを通じた、国境を越える協力にも目を向けます。

- 業務名称:ブータン国ドローン利活用環境整備プロジェクト
- 履行期間:2025年10月10日 ~ 2028年2月15日
- 実施体制:エアロトヨタ株式会社(代表幹事)、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)、株式会社地球システム科学による共同企業体(JV)
■本件に関するお問合せ
JUIDA国際チーム:ohzora@uas-japan.org
